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ブルーカラービリオネアを生むのは、ホワイトカラーである|恒電社の考え方

連載「恒電社の考え方」。株式会社恒電社 取締役 恒石陣汰と、記事タイトル「ブルーカラービリオネアを生むのは、ホワイトカラーである」

「ブルーカラービリオネア」という言葉を聞くようになりました。

AIが事務作業を代替し始めたことで、相対的に現場の仕事の価値が見直されています。人手不足も重なり、手に職を持つ人がこれから豊かになる、という見方です。

この見方の半分は正しいと私は考えています。工事を担う人の数が減っているのは事実です。工事を必要とするお客様は増え、材料費や労務費も上がっているため、工事の価格は上昇する方向にあります。

ただし、工事の価格が上がるだけで、現場で働く人が豊かになるわけではありません。

先に結論を書くと、現場で働く人が豊かになるには、現場で生まれた価値が正しい価格になり、その価格が現場まで届く必要があります。そのつなぎ目を担うのが、ホワイトカラーの仕事です。

このコラムでは、この結論に至る理由を、恒電社が実際に通ってきた道を交えながら順に書きます。

「価値」「価格」「対価」を分けて考える

まず、このコラムでは似た三つの言葉を次のように使い分けます。

「価値」は、工事によってお客様が得られるものです。工場のキュービクルを更新する工事であれば、この先20年安心して使える設備が手に入ること、作業が早く工事の停電時間が短いことなどが価値にあたります。価値は、最後は現場で電気工事士の技術によって形になります。

「価格」は、お客様がその工事に支払う金額です。価格は、工事の範囲と進め方、お見積りの内訳をご説明し、ご契約いただいた時点で決まります。つまり価格は、「現場に入る前」に決まります。

「対価」は、価格のうち、実際に工事をした会社と人に届く金額です。対価は、お客様からいただいた金額が、どの会社を通り、どう分配されるかで決まります。

人手不足は、このうちの価値と価格を押し上げます。国土交通省の公共工事設計労務単価でも、電工の単価は上がっています。それでも、現場で働く人の豊かさを最後に決めるのは対価のほうです。価格が上がっても、どの会社を通り、どう分けられるかという構造が変わらなければ、現場に届く割合は変わりません。三つはそれぞれ別の場所で、別の人によって決まります。

このずれが、冒頭で「半分は正しい」と書いたときの、残りの半分です。

価値・価格・対価の違い。価値は最後は現場で電気工事士の技術によって、価格は現場に入る前のご契約の時点で、対価はいただいた金額の分配で決まる。人手不足は価値と価格を押し上げるが、働く人の豊かさを最後に決めるのは対価。

「二度とこんな想いをしたくない」

価値を生んでいても、それが価格にも対価にもならないことを、恒電社は身をもって経験しています。元請けに転換する前の恒電社は、大手ハウスメーカーから住宅の電気工事を受注していました。新築住宅の着工が減るとコストダウンの要求が強まり、受注単価の引き下げは死活問題になりました。取引先の担当者が代わると、それまでの実績はほとんど評価されませんでした。「やり方に従えないなら仕事は渡せないよ」と言われれば、それまでです。

三つの言葉で言い直すと、工事の価値は恒電社の現場で生まれていたのに、価格を決める場に恒電社はいなかった、ということです。価格は発注する側が決め、恒電社はそれを受け入れるかどうかしか選べませんでした。仕事の多くを一社に頼っていたため、条件を交渉できる立場にもありませんでした。

代表取締役の恒石隆顕は「二度とこんな想いをしたくない」と、2005年に元請けへの転換を決めました。お客様から直接対価をいただく会社になる、という決断です。当時の経緯は、代表インタビューで本人が話しています。

「価値」と「価格」は、別の場所で決まる

では、価格はどこで、誰が決めているのでしょうか。キュービクルを更新する工事で確かめます。

この工事の価値は、最後は現場で形になります。電気工事士が安全に工事をし、20年使える設備を現場でお引き渡しします。

これに対して、この工事の価格は「現場に入る前」に決まります。お客様と直接お話しする担当者が、ご相談を伺い、現地を確認し、優先順位をつけて進め方をご提案します。そして、お見積りの根拠と内訳をご説明し、ご契約いただく流れです。価格は、このご相談からご契約までの間に決まります。(「決まってしまう」と言ったほうが近いかもしれません。)

ご相談・現地確認・ご提案・お見積りのご説明・ご契約までの「現場に入る前」に価格が決まり、施工・お引き渡しの「現場」で価値が形になる。担い手は前半が元請けの担当者、後半が電気工事士。

この場に立つのが「元請け」の会社です。元請けとしてお客様に直接ご提案できるかどうかは、施工力だけでは決まりません。

決め手は、「①お客様のご相談を伺い、やるべきことと後回しでよいことを一緒に整理する役割」と「②その結果に責任を持つ立場」の二つを持っていることだと考えています。工事の範囲と価格をお客様と決め、その先の協力業者にいくらで発注するかを決めるのも、この二つを持つ会社です。

つまり、価値を生む人と価格を決める人は、必ずしも同じではありません。

ご提案やご契約の場に施工を担う会社がいなければ、その技術や工夫は価格に反映されにくくなります。より良いご提案をするには、その後の工事まで自分たちで担えることが必要だと、私たちは考えています。

価格と対価は、別の問題です

次は、「お客様と元請け業者の間で決まった価格」がどう届くかです。ここからは仮の数字です。

お客様から1,000万円でご発注いただく工事で、元請けが20%、一次の工事会社が15%、二次の工事会社が15%を差し引くと、実際に施工する三次の工事会社に届く対価は578万円です。同じ現場を同じ人が同じ品質で施工しても、その会社が使える金額は価格の約6割になります。

仮の数字で、1,000万円の工事が元請けで20%、一次・二次の工事会社で15%ずつ差し引かれ、実際に施工する三次の工事会社に届くのは578万円。差額の422万円は管理・調整・責任の対価として手前の各社へ渡る。

差額の422万円は、工事の管理や調整、責任を引き受けた対価として、手前の各社に渡っています。いずれも各社の仕事への対価ではありますが、実際に施工する会社が自らの仕事に充てられる金額は、その分だけ小さくなるということです。この構造のままでは、価格が上がっても、施工する会社に届く割合は約6割のままです。

もちろん、元請けになれば管理や調整、責任の仕事も自社で担うことになり、その費用もかかります。それでも、お客様から直接対価をいただけば、その分配を自分たちで決め、現場の給料や育成に回すことができます。

元請けになるだけでは、現場は豊かにならない

ただし、回すことができることと、実際に回していることは別です。差額の422万円の受け取り手が、ほかの会社から恒電社に替わるだけなら、現場で働く人の手元には何も届きません。

それに、恒電社自身も、協力業者様に工事をお願いする立場です。協力業者様から見れば、私たちも価格を決める手前の会社の一つです。元請けであることは、それだけで誇れることではないと考えています。

問われるのは、元請けとして決められるようになった分配を、誰に向けるかです。

一つは、お客様です。お客様と直接ご契約することを基本にし、間に入る会社を減らした分は、適正な価格としてお客様にお返しします。もう一つは、一緒に施工する協力業者様です。協力業者様とは共存共栄の関係でありたいと考えていて、ビジョンを共にする協力業者様には技術もお伝えし、恒電社の品質で工事ができる会社を一社でも多く増やしていきます。そして、恒電社で働く仲間です。これからの会社のテーマとして、「採用・定着・育成に、より投資する」ことを掲げています。

お客様、協力業者様、働く仲間のどこか一つだけが得をする分け方は、長く続きません。元請けになったことで、私たちはその分け方を自分たちで決める責任を負ったのだと考えています。

電気工事士が営業も担う、今の恒電社の形とその限界

ここまでをまとめると、電気工事会社で働くメンバーが豊かになるには、「①価値に見合った価格をお客様と決められること」と、「②その価格の分配を自分たちで決められること」の二つが必要になります。

二つとも、元請けとしてお客様から直接対価をいただく立場に立たなければ満たせない、と私は考えています。そして、お客様と向き合い、提案し、契約し、責任を引き受ける仕事は、職種でいえばホワイトカラーの仕事です。

電気工事士が独立して自分で元請けになり、この仕事まで一人で担う道もあります。実は今の恒電社でも、近いことが起きています。このホワイトカラーの仕事の多くを、電気工事士が兼任して担っているからです。現場を知る電気工事士がご相談を伺い、現地を確認し、お見積りをつくってご説明しているため、現場の技術の価値が価格に反映されやすく、これは私たちの強みだと考えています。

ただ、この形のままで、お引き受けできる仕事を増やし続けることはできません。工事を担う人の確保は、どの会社でも難しくなっています。お問い合わせやご相談にお応えし続けるには、ご提案の力に加えて、施工できる人数と技術力も欠かせません。ご相談が増えるほど、電気工事士はご提案と施工の両方を抱え、現場に出る時間が足りなくなります。担い手がこれだけ限られている以上、電気工事士の兼務だけでご相談の増加に応え続けることはできません。

信頼できる協力業者様と一緒に施工できる体制を広げているのも、同じ理由からです。自社の人数だけで、お引き受けできる仕事の量を決めないためです。

だから、ホワイトカラーの仕事を専門に担う仲間が非常に大切だと考えています。

電気工事士がご提案の場から離れるのではありません。お見積りや書類、段取りをホワイトカラーの仲間が引き受けることで、電気工事士は現場の仕事と、現場を知る人にしかできないご説明に時間を使えるようになります。

今は電気工事士がご相談・ご提案、お見積り、書類・段取り、施工をすべて兼務している。これからはお見積りと書類・段取りをホワイトカラーの仲間が担い、電気工事士は施工と現場を知る人にしかできないご説明に時間を使う。

ホワイトカラーの仕事は、説明・責任の二つ

ホワイトカラーの仕事を、最初に定義した三つの言葉のつなぎ目で整理すると、次の二つになります。今の恒電社では、このうち電気工事士が兼ねている仕事もあります。

一つ目の「説明」は、価値を価格につなぐ仕事です。お客様の「何から手をつければいいか分からない」「この金額は妥当なのか」「誰に任せれば安心なのか」という不安に、先回りしてお応えすることです。優先順位をつけてご提案し、お見積りの根拠と内訳をご説明することで、現場の技術の価値を、お客様が納得できる価格の形にします。

二つ目の「責任」は、この流れ全体を裏付ける仕事です。契約書類や電力会社への申請、工程、品質、安全、資金繰りまで、工事全体の責任を引き受けることです。AIが書類を作成できるようになっても、その正しさに責任を持つ人は要ります。書類や安全の記録は、お客様からの信用そのものだからです。

価値が正しく価格に反映されるかどうかには、工事会社の外のホワイトカラーも関わっています。工事を発注されるお客様の側にも、金額だけでなく、停電のリスクや設備の寿命まで含めて判断される方がいます。良いご提案が選ばれるのは、そうした方がいるからです。

順序を逆にすると、この話は成り立たない

ここまで読んで、「結局、元請けになって価格を上げたいだけではないか」と感じた方もいるかもしれません。この疑問への答えも、三つの言葉の関係にあります。価格は、価値を超えてはいけないということです。

ブルーカラービリオネアを目的にしてしまうと、価値より先に価格を考えることになり、順序が逆になります。ブルーカラービリオネアは目指すものではなく、正しい順序を守った結果として生まれるものだと考えています。お客様に直接ご提案できる立場を価格のつり上げに使えば、お客様は離れ、結局は現場の仕事が減っていくでしょう。

私たちが判断に迷ったときの軸の一つに、「良い仕事」ができているか、という問いがあります。良い仕事とは、お客様が喜ぶこと、働く仲間が喜ぶこと、工夫があることです。恒電社では、「良い仕事をすれば、売上や評価は必ず後からついてくる。この順序を決して逆にしない」と決めています。良い仕事をしても、すぐに報われるとは限りません。それでもこの順序を守るのが、私たちの約束です。だから順序は、まず良い仕事で価値を生み、その価値に見合った価格をいただき、その対価を恒電社で働くメンバーに還元することです。

先に書いたとおり、私たちは採用・定着・育成への投資を増やしていきます。ただ、良い仕事の裏付けがないまま給料だけを上げても、長くは続けられません。お客様にとっても、働く人にとっても魅力的な会社であり続けるには、良い仕事と人への投資を一体で考える必要があります。

ブルーカラーとホワイトカラーの境界線を、溶かしていきたい

ほかの業界から、この業界に入るか迷っているホワイトカラーの方に、伝えたいことがあります。

AIが事務作業を肩代わりしていく時代だからこそ、現場で価値を生み出している人の仕事の重みが増していくということは冒頭でお伝えした通りです。配線を引き、設備を据え付け、その場で判断する仕事は、AIには代われません。

ただ、その価値を価格につなぐには、現場を知っている人(ホワイトカラー的メンバー)が、お客様と向き合う場にいる必要があります。工事の技術的な良し悪しを、お客様が細部まで判断するのは難しいものです。お客様が会社を比較できるのは、実質的にはご相談からご契約までのやり取りに限られ、お客様の不安がいちばん大きいのもこの時期です。高圧の電気設備や脱炭素は専門性が高く、「何を相談すればいいのかすら分からない」という声もよく伺います。

だから恒電社では、ブルーカラーとホワイトカラーの境界線を溶かしたいと考えています。

今の恒電社では、電気工事士がご提案やお見積りの場に立ち、自分の言葉でお客様にご説明するのが日常です。これからは反対側からも、ホワイトカラーの仲間が現場に足を運び、自分の目で設備を見て、電気工事士の判断を聞く形をつくっていきます。全員が両方を担う必要はありませんが、その間を行き来できる人にこそ、これからいちばん価値があると思います。

タイトルに「ブルーカラービリオネアを生むのは、ホワイトカラーである」と書いたのは、ホワイトカラーだけで生めるという意味ではありません。現場で生まれた価値を価格と対価につなぐのがホワイトカラーの役割で、その役割は電気工事士と組んではじめて果たせる、という意味です。

ホワイトカラーの方にとって、これは大きな機会です。

お客様の話を伺って整理する力、分かりやすい資料をつくる力、先回りして段取りを組む力、数字を見て判断する力など、前職で身につけた力がそのまま生きます。私自身も、IT企業から26歳で恒電社に入りました。恒電社のメンバーの9割は、入社時には電気の仕事が初めてでした。電気の知識は、入社してから現場の仲間と一緒に積み上げていけます。

ホワイトカラーの仲間と電気工事士でつくったご提案が現場で形になり、お客様に喜んでいただき、その対価が自分自身や働く仲間の給料になる。自分の仕事がどこにつながっているのかがここまで見えやすい仕事は、そう多くないと思います。

「当たり前」の基準を、毎日上げていく

今ほど、ブルーカラーにとっても、ホワイトカラーにとっても、面白い時代はない、と思っています。

ブルーカラーにとっては、自分の技術が正しく評価され、給料として返ってくる時代が、ようやく始まろうとしています。ホワイトカラーにとっても、単純作業ではなく「現場とお客様をつなぐ仕事」に本気で打ち込める時代になりました。

両者が組むことで、これまでの電気工事会社にはなかった形の会社をつくれると考えています。

恒電社がつくりたいのは、現場を知る電気工事士と、現場の側に立つホワイトカラーが同じテーブルでお客様の課題を話し合い、業界の常識を問い直しながら、新しい価値を生み出し続ける会社です。電気工事士とホワイトカラーは役割が違うだけで、どちらが上ということはありません。

私たちは、ベンチャーの気持ちのままでいたいと思っています。前例がないことを恐れず、自分たちで考え、試し、変えていきます。

ただし、派手にやるつもりはありません。一時的に注目を集める変化は、長く続かないことが多いからです。

恒電社が選ぶのは、一件ごとに提案を磨き、一つひとつの現場を丁寧に仕上げ、記録を積み上げ、仕組みを少しずつ良くしていく道。

提案の質も、段取りの速さも、お客様からの信頼も少しずつ積み上げ、「当たり前」の基準を高め続けることが、やがて業界の水準そのものを変えていくと考えています。

恒電社で働く人は、現場に出る人だけではありません。技術に誇りを持つ電気工事士も、言葉と仕組みでお客様に価値を届けたい人も、別の立場から現場を支えたい人もいます。経験があってもなくても、この変わり目を面白がれる方とご一緒できたら、とてもうれしいです。地道に、しかし本気で、一緒に面白い会社をつくっていきませんか。

現在募集している職種は、募集要項のページにまとめています。ここに書いたことに少しでも近いものを感じていただけたなら、ぜひ一度、お話を聞かせてください。

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