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ブルーカラービリオネアを生むのは、ホワイトカラーである|恒電社の考え方

作成者: 恒石陣汰|Oct 2, 2026, 1:55:43 PM

「ブルーカラービリオネア」という言葉を聞くようになりました。AIが事務の仕事を代わりにやってくれるようになり、現場の仕事の価値が見直されています。人手不足も重なっているので、手に職がある人がこれから豊かになる、という見方です。

私は、この見方の半分は正しいと思います。工事を担う人の数は、確かに減っています。工事を必要とするお客様は増え、材料費や労務費も上がっているので、工事の価格は上がる方向に動いています。

ただ、残りの半分が抜けていると感じています。工事の価格が上がることと、その対価を現場で働く人が受け取れることは、別の話です。このコラムでは、恒電社が実際に通ってきた道と、今考えていることを、そのまま書きます。

「二度とこんな想いをしたくない」

工事の価格と、現場に届く対価が別の話だということを、恒電社も身をもって知った時期があります。当時の恒電社は、大手ハウスメーカーから住宅の電気工事をいただいていました。新築住宅の着工が減るとコストダウンの要求が強まり、受注単価の引き下げは死活問題になりました。担当者が代わると、それまでの実績はほとんど評価されませんでした。「やり方に従えないなら仕事は渡せないよ」と言われれば、それまでです。

代表取締役の恒石隆顕は「二度とこんな想いをしたくない」と、2005年に元請けへの転換を決めました。お客様から直接対価をいただく会社になる、という決断です。当時のことは、代表インタビューで本人が話しています。

工事の金額は、現場ではなく、ご相談からご契約までの間に決まります

工場の高圧受変電設備(キュービクル)を更新する工事で考えてみます。電気工事士は、停電の時間を短くし、安全に切り替え、二十年使える設備を据え付けます。この価値は、間違いなく現場で生まれるものです。

しかし、この工事の金額は、現場では決まりません。お客様と直接お話しする会社の担当者が、ご相談を伺い、現地を確認し、優先順位をつけて進め方をご提案します。お見積りの根拠と内訳をご説明したうえで、ご契約いただく流れです。金額は、このご相談からご契約までの間に決まります。

元請けの会社がお客様に直接ご提案できるのは、工事をする力があるからだけではありません。自社で施工する元請けもあります。決め手になるのは、「お客様のご相談を伺い、やるべきことと後回しでよいことを一緒に整理する役目」と「結果に責任を持つ立場」を持っていることだと考えています。お客様と工事の範囲と金額を決め、その先の会社にいくらで頼むかを決めるのも、この二つを持つ会社です。ご提案やご契約の場に施工を担う会社がいなければ、その技術や工夫は、工事の範囲や金額に反映されにくくなります。

私たちは、より良いご提案をするには、その後の工事まで自分たちで担えることが必要だと考えています。

1,000万円の工事で、施工した会社に届くのはいくらか

仮の数字で考えてみます。お客様から1,000万円でご発注いただく工事があるとします。元請けが20%、一次の施工会社が15%、二次の施工会社が15%を差し引くと、三次の施工会社に届くのは578万円です。同じ現場を同じ人が同じ品質で施工しても、その会社が使えるお金は約6割に減ります。

差の422万円は、工事の管理や調整、責任を引き受けた対価として、手前の会社に渡っています。それぞれの会社の仕事への対価ではありますが、実際に施工する会社が自分たちの仕事に付けられる金額は、その分だけ小さくなる、ということです。

もちろん、元請けになれば、管理や調整、責任の仕事も自分たちで担うことになり、その費用もかかります。それでも、お客様から直接対価をいただけば、その使い道を自分たちで決め、現場の給料や育成に回すことができます。

だから、ホワイトカラーが要ります

現場で働く人が豊かになるには、その人が働く会社が元請けとして、お客様から直接対価をいただく立場に立つしかない、と私は考えています。お客様と向き合い、提案し、契約し、責任を引き受ける仕事は、どう呼んでもホワイトカラーの仕事です。

では、これを現場で働く電気工事士が自分でやればいいのでしょうか。営業も設計も経営もできる電気工事士がいれば、もちろん最強だと思います。ただ、工事を担う人の確保は、どの会社でも難しくなっています。お問い合わせやご相談にお応えしていくには、ご提案だけでなく、施工できる人数と技術力も必要です。限られた電気工事士に事務所の仕事まで任せれば、現場に出る時間が減り、お引き受けできる工事の数が減ってしまいます。より多くのご相談にお応えし続けるには、全員が両方をやる形では続きません。

信頼できる協力業者様と一緒に施工できる体制を広げているのも、同じ理由です。自社の人数だけで、お引き受けできる仕事の量を決めないためです。だから、事務所の仕事を専門に担う仲間が要ります。そうすれば、電気工事士は現場の仕事に集中できます。

事務所で働く人の仕事は、大きく三つあります

一つ目は、お客様の「何から手をつければいいか分からない」「この金額は妥当なのか」「誰に任せれば安心なのか」という不安に、先回りしてお応えすることです。優先順位をつけてご提案し、お見積りの根拠と内訳をご説明することで、現場の技術の価値をお伝えします。

二つ目は、誰の仕事がどれだけの価値を生んだかを見て、いただいた対価を給料や育成として現場に正しく分けることです。

三つ目は、契約書類や電力会社への申請、工程、品質、安全、お金のやりくりまで、工事全体の責任を引き受けることです。AIが書類をつくってくれるようになっても、その正しさに責任を持つ人は要ります。書類や安全の記録は、お客様からの信用そのものだからです。

施工会社以外にも、ホワイトカラーはいます。工事を発注されるお客様の側にも、金額だけでなく、停電のリスクや設備の寿命まで含めて判断される方がいます。そうした方がいてこそ、良いご提案が正当に評価されるのだと思います。銀行が施工会社の技術を評価してお金を貸すこと、国や業界がルールで現場に報いること、道具をつくる人が調整や書類の手間を減らして、小さな会社でも元請けになれるようにすること。お客様も、銀行も、国や業界も、現場の価値で判断するようになったとき、現場の仕事は正当に評価されるようになると思っています。

お金は、良い仕事の後からついてきます

ブルーカラービリオネアを目的にしてしまうと、この話は成り立たなくなります。お客様に直接ご提案できる立場を、金額のつり上げに使えば、お客様は離れ、結局は現場の仕事が減っていくでしょう。

私たちが迷ったときの判断軸の一つに、「良い仕事」ができているか、という問いがあります。良い仕事とは、お客様が喜ぶこと、働く仲間が喜ぶこと、工夫があることです。良い仕事をすれば、売上や評価は必ず後からついてくる、と考えています。だから順番は、まず良い仕事をして、お客様からいただいた対価を、恒電社で働くメンバーに還元していくことです。

私たちも今、採用・定着・育成への投資を増やしています。ただ、良い仕事の裏付けがないまま給料だけを上げても、長くは続けられません。お客様にとっても、働く人にとっても魅力的な会社であり続けるには、良い仕事と人への投資をセットで考える必要があると思っています。

現場と事務所の境界線を、溶かしていきたい

ほかの業界から、この業界に入ろうか迷っているホワイトカラーの方に、伝えたいことがあります。

AIが事務の作業を肩代わりしていく時代だからこそ、現場で価値を生み出している人が、いちばん輝くと思っています。配線を引き、設備を据え付け、その場で判断する人の仕事は、AIには代われません。

ただ、その価値をお客様に届けるには、現場を知っている人が、お客様と向き合う場にいる必要があります。工事の技術的な良し悪しを、お客様が細かいところまで判断するのは難しいものです。お客様が会社を見比べられるのは、ご相談からご契約までのやり取りの中くらいしかなく、お客様の不安がいちばん大きいのもこの時期です。高圧の電気設備や脱炭素のことは専門性が高く、「何を相談すればいいのかすら分からない」という声もよく伺います。

だから私は、現場と事務所の境界線を溶かしたいと考えています。事務所で働く人も現場に足を運び、自分の目で設備を見て、電気工事士の判断を聞く。電気工事士も、ご提案やお見積りの場に加わり、自分の言葉でお客様にご説明する。全員が両方を担う必要はありませんが、その間を行き来できる人にこそ、これからいちばん価値があると思います。

ホワイトカラーの方にとって、これは大きなチャンスだと思います。お客様の話を伺って整理する力、分かりやすい資料をつくる力、先回りして段取りを組む力、数字を見て判断する力など、前の仕事で身につけたものが、そのまま生きます。私自身も、IT企業から26歳で恒電社に入りました。恒電社のメンバーの9割は、入社したとき電気の仕事が初めてでした。電気の知識は、入ってから現場の仲間と一緒に積み上げていけます。

事務所でつくったご提案が現場で形になり、お客様に喜んでいただき、その対価が仲間の給料になる。自分の仕事がどこにつながっているのかが、ここまで見えやすい仕事は、そう多くないと思います。

この変わり目を、一緒に面白がりたい

振り返ると、今ほど、現場で働く人にとっても、事務所で働く人にとっても、面白い時代はないと思っています。

現場で働く人にとっては、自分の技術が正しく評価され、給料として返ってくる時代が、やっと始まろうとしているところです。事務所で働く人にとっても、現場とお客様をつなぐ仕事に、本気で打ち込める時代が来ています。どちらかが勝つ時代ではありません。両方が組んだときにだけ、まだ誰も見たことのない会社がつくれる時代だと思います。

だから、一緒につくりたい会社があります。現場を知る電気工事士と、現場の側に立つホワイトカラーが、同じテーブルでお客様の課題を話し合う会社。業界の常識に疑問を投げかけ、改善し、新しい価値を生み出し続ける会社。ほかのどこにもない会社です。

私たちは、ベンチャーの気持ちのままでいたいと思っています。前例がないことを怖がらず、自分たちで考え、試し、変えていきます。ただし、派手にやるつもりはまったくありません。花火を打ち上げるような変化は、たいてい花火のようにすぐ消えてしまいます。私たちが選ぶのは、一件ごとに提案を磨き、一つひとつの現場を丁寧に仕上げ、記録を積み上げ、仕組みを少しずつ良くしていく、地道な道です。昨日より少しだけ良い提案、先月より少しだけ速い段取り、去年より少しだけ厚い信頼。その小さな積み重ねで「当たり前」の基準を高め続けることが、気づけば業界の景色を変えていくと考えています。

恒電社で働く人は、現場に出る人だけではありません。技術に誇りを持つ電気工事士も、言葉と仕組みでお客様に価値を届けたい人も、別の立場から現場を支えたい人もいます。経験があってもなくても、この変わり目を面白がれる方とご一緒できたら、とてもうれしいです。地道に、でも本気で、一緒に面白い会社をつくっていきませんか。

現在募集している職種は、募集要項のページにまとめています。ここに書いたことに少しでも近いものを感じていただけたなら、ぜひ一度、お話を聞かせてください。